リハビリ職の給料が安い5つの理由
理学療法士・作業療法士として働いているけど、給料がなかなか上がらないな。
なんでこんなに給料が安いのかな?
これからもこのままの給料なのかな?
給料が安いリハ職の疑問に答えます。
1.収益構造的に収入の上限が決まる
2.客単価は診療報酬により決まる。(つまり国の気分しだい)
3.付加価値をつけることができない
4.昇進できる可能性が限られる
5.リハビリ職の増加により治療の質が下がってきている
結論としては、収益構造的に稼ぐことに限界があります。また、客単価である診療報酬は、国によって定められます。そのため、高い治療技術を習得したとしても、1単位は1単位。単価はあげられません。
収入を上げるためには、副業や転職など他の手段を考える必要があると思います。
それでは深堀していきましょう。
1.収益構造的に収入の上限が決まる
最初に収益構造の説明からです。
収益構造としては下記の通り。
客単価×介入した人数=その日の収益
(簡略化するために細かい書類などの点数は除いています)
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の1日に治療できる人数は24単位までです。
さらに、週に108単位までと、法律により決まっています。
どうがんばってもこれ以上稼ぐことはできません。なので、やればやるほど稼げるわけでもなく、上限は決まります。
「給料が安いなー」と嘆いている方も、この計算式が頭に入るだけで、給料が上がらない理由がよく分かると思います。
2.客単価は診療報酬により決まる。(つまり国の気分しだい)
収益を増加する場合は、客単価を上げるか、客数を多くするしかありません。
リハビリ職は経費がそれほどかからないため、経費の削減をして増益を狙うという戦略もとれません。
お客の数を多くするというのは、先ほどの項目で述べた通り、法律で上限が決まっているため厳しいです。客単価についてはどうでしょうか。
客単価も、診療報酬で決まります。施設基準が低いところで、これから施設基準を上げていこうとすると、単価は上がります。しかし、施設基準Ⅰを取得しているところだと、これ以上あげようがありません。
診療報酬は国で定められるため、どれだけ良い治療をしたとしても単価があがることはありません。
足底板を用いると良いのでは?
足底板で単価を上げるという観点もありますが、作成に時間がかかる上に、技術を習得するまでにも時間がかかります。
時間あたりの単価を考えてみます。
修正する時間なども入れると、労力の割りに収益が低いです。
結論、割りに合わないと思います。
なので、足底板を作成するよりは、通常の運動療法を展開していった方が、収益的に安定すると考えられます。
足底板を作成すること自体を否定しているわけではないです。
稼ぐことだけにフォーカスすると、効率が悪いと言いたいだけです。
考え方は人それぞれなので、足底板を作成することが楽しいとか、やりがいを感じるという方は、しっかりとやり込んだ方がいいと思います。
経営者の視点で考えてみると?
次は経営者からの視点から考えてみます。
経営者の視点は下記の通りです。
・経験年数がある(治療技術がある)=人件費が高い
・経験年数が浅い(治療技術が低い)=人件費が安い
上記のように考える経営者もいると思います。
高い治療技術をもつ人件費が高いセラピストよりも、治療技術が低くても、人件費が安い若いスタッフを雇った方が、人件費が圧迫されるため増益になります。
安い人件費で雇えるのであれば、その方が良いと考える経営者もいると思います。またはその逆で、治療技術や人間性を重視する経営者もいるとは思います。
この辺りは何に重点を置いて経営戦略を考えるかなので、どのような人間を集めるのかは、経営者の考え方次第ですね。
あくまで参考程度に。
3.付加価値をつけることができない
収益構造から客単価を上げることを考えました。しかし、これ以上、単価をあげられないというのが結論です。
同じ1単位であれば、新人の1 単位も、ベテランの1単位も同じ料金です。
特別な手技や資格を取得して、治療技術をあげたとします。患者側から、この手技はすごいとか、付加価値の高い治療技術だと思ってもらえるでしょうか。
こんなやりとり想像できますよね。
中には、即時的な効果があるから次回もあなたで!とか、スポーツ現場で働いている人では、うちのチームで働いてくれないかなどのオファーが来る可能性もあります。
有名なスポーツチームの専属スタッフを目指すのであれば、収入を上げることもできると思います。
こんな話は一部の人だけですので、多くの病院や施設で働くセラピストレベルだと、関係ない話になってきます。
なので、治療技術を上げて付加価値をつけられるか?
結論は「多くの方にとっては」NOです。
ただでさえ、揉んでくれればいいよなどと言われることが多いこの業種。特別な手技を会得したとして、単価が上がることはないです。
しかし、治療手技の勉強をすることが悪いとか、ライセンスをとるのが悪いとかいっているわけではないので、勘違いはしないでください。
しっかりと患者様に結果を残せる治療技術は、リハビリに携わる上では絶対的に必要です。
収益を上げていく観点からすると、効率が悪く、付加価値がわかりにくいという意味です。
付加価値をつけるとしたら、テーピングや足底板作成を別料金で行うことくらいでしょうか。
毎月の書類業務があると思いますが、それなりに単価は高いので、積極的に書類は作成するようにしましょう。
4.昇進できる可能性が限られる
理学療法士、作業療法士の学校が乱立し、毎年1万人近くのセラピストが世に排出されています。
年収を上げる手段として、主任や係長、課長などに昇進することを目標に頑張っている人もいるかと思います。
私たちの業界では、結果が数字で出にくく、秀でた能力を数字で証明しづらいです。このことから、年功序列で管理職が決定されている職場も少なくないのではないでしょうか。
管理職になれるのは、各部署で1~2人。多くて3,4人程度でしょうか。毎年1万人輩出されるわけです。回復期など大人数がいる部署に配属にされたら、上位1、2人になるためには何年必要でしょうか。
計り知れない時間が必要になってきます。
以上のことから、昇進できる(役職につける)確率は非常に低いです。年収を上げる手段として、昇進を狙うことは効率が悪いと言わざるを得ません。
5.リハビリ職の増加により治療の質が下がってきている
私たちの給料の源泉は、大部分が医療保険です。要は国が集めた税金を、医療費として予算委員会で計上し、その予算から私たちに給料という形で振り込まれてきます。
国の財政難は、皆さんも分かる通りです。余裕がないため、少しでも効果が大きいところに予算が割かれるのは当たり前の考え方です。
2020年現在は理学療法士・作業療法士の政治家は少なく、政治力も弱い状態が続いています。
また、論文は多くなってきたとはいえ、まだまだ、リハビリの効果を実証するだけの論文が、十分にあるとは言えない状況です。
現場レベルでは、効果があることはわかっていますし、生活を支えている実感もあります。
また、リハビリは患者様に感謝されることが多い、素晴らしい職業です。
しかし、厚生労働省の目線からすると、無駄に長くリハビリを行なっているとか、効果の出ないことをだらだらと行なって医療費を無駄遣いされていると考えられているようです。
だから、診療報酬が下げられたり、色々と新たな面倒臭い制度ができたりするのです。
以前は、リハビリ職の人数が少なく貴重な存在でした。学校も少なく、頭が良い、ほんの一握りの人しか学校に入れない時代がありました。
その当時はリハビリ職というだけで希少価値があったため、単価も高かったです。
しかし、現在は学校が乱立し毎年多くの理学療法士、作業療法士が世に輩出されるようになりました。そのため、人数は増やすことには成功しましたが、間口を広げすぎたのか、質の悪いリハビリ職が増えるという結果になりました。
当然、研究など行わず、効果を客観的に実証することなく、日々の業務を行う人が増えたのです。
これでは、厚生労働省にリハビリは効果があって、貴重な職種なんだとアピールすることすらできません。
私たちの仕事が本当に価値があって、効果があることを世に示していかなければなりません。
6.まとめ
いかがだったでしょうか。リハビリ職が給料が安い理由が、よくおわかり頂けたと思います。
これからの時代、自分の給料は自分で稼いでいく時代だと思っています。
今勤めている職場がいつ無くなっても良いように、個別にスキルをつけておくとか、副業を始めるなどの対策を始めた方が良いですね。1つの職業に固執する必要もなくなってきている時代だからこその、働き方もできると思います。
もともとこの職業を目指していたり、すでになっている人は基本的には勉強ができる人だと思います。なので、新たなジャンルにチャレンジして、今勤めているところの収入に依存しすぎない環境を作っていければ理想的ですね。
それでは今回はこの辺りで。