訪問看護ステーションでの理学療法士の役割をニーズ別にまとめてみた
訪問看護ステーションでの理学療法士の役割ってなんなの?
訪問看護ステーションに転職したいけど、どのような仕事を求められるかわからないな。
そんな役割がよくわからない人にお送りします。
最初に、本記事の結論です。
働く環境が変わるだけで、ニーズに応えていくことは変わらない
です。
リハビリ業務を行なっていく中で、患者・家族のニーズに応えていくことが必要となってきます。
ニーズに応えるのは、病院、施設、クリニック、在宅、どこでも一緒です。
働く場所によって、疾患やニーズの内訳が変わります。
この記事を読んでいる人は、これから訪問看護ステーションで働きたい・働かなければならない人が多いと思います。
対応したことがないニーズを求められるから、不安だし、動けなくなります。
あらかじめ、求められるニーズを把握すれば、訪問看護ステーションで働くことの心配が減ると思います。
なので、今回の記事では、今まで訪問看護ステーションで勤務してきて、求められたニーズをもとに話をしていきます。
1.生活が自立している場合
生活が自立している場合は、特定の場所の痛みや違和感の改善をしたいと求められることが多いです。
このようなニーズのある人は、疾患が比較的安定していて、自主練習とかも一通りこなしてはいる人。
そんな人でも、いまいち効果が見込めないと、このようなニーズになると思われます。
今まで経験してきた具体的な例をお話しします。
具体例① SLEの患者さん
SLEで動けなくなってしまった患者さん。
退院後動けるようにはなってきたけど、筋力低下から、筋の張りや腰痛を訴え、それらを改善したいという例でした。
外来リハビリにも通えるレベルの身体機能ではあったのですが、訪問での対応となっていました。
自主練習も行えて、地域の集まりやスポーツなども出来ている状況です。
リハビリは行わなくても良いと思えるくらいに、動作などはできていました。
具体例② 脳梗塞の患者さん
続いて2例目です。脳梗塞右麻痺。上肢は痙性が強く、廃用手となっています。
下肢はシューホンが常に必要なレベルの麻痺が残存。
発症からかなり時間が経っており、機能改善は難しいレベルです。
現状のレベルで生活は一応自立しており、身体機能改善型のデイサービスにも通えています。
リハビリでは、体力づくりのために、屋外歩行や階段昇降をメインに行なっています。
屋外歩行も自立しており、時間はかかるものの、なんとか買い物にも行けています。
ただ、問題点は家の中が汚い事です。
本来であればヘルパーなどの利用も検討しても良いくらいですが、リハビリ以外の社会資源の受け入れが悪いのです。
リハビリというよりも、生活環境を整えるためにサービスの導入が必要と感じた例でした。
2.生活に困っていることがある場合
生活に困っている事がある人のニーズは、ADL上の特定の動作ができない事が多いです。
おそらく、回復期のスタッフなど、入院中に関わっていたスタッフもADL動作が不安で、訪問につなげる事が考えられます。
なので、訪問での最初の役割としては、課題になるADL動作を評価することから始まります。
また、福祉用具の選定をしたものの、ちゃんと使用されているかというのも、評価しなければならないものの一つです。
では、具体例です。
具体例①
退院後すぐの患者様で、屋内での生活指導は一通りしたものの、認知症のため、詳細な聞き取りが困難で、入浴動作の確認が必要だった例です。
ここで、情報をまとめてみます。
歩行手段:屋内でも歩行器使用
浴槽入浴:ヘルパーさんによる見守りを想定
歩行手段:歩行器は使用せず、独歩
浴槽入浴:ヘルパーさんの介助が必要。手すりを追加する必要あり
屋内の歩行手段として、歩行器を使用する設定で退院したそうです。
しかし、浴槽から出る動作が困難となっており、ヘルパーさんの介助が必要なくらいの動作レベルでした。
また、屋内での移動手段は何も使用しないで歩いており、退院時の設定が生きていない状態になっていました。
浴槽入浴が困難になっていたので、浴槽の淵に手すりを追加して動作練習を行いました。
また、屋内の歩行は歩行器なしでも安定していたため、歩行器は返却しました。
このように、入院時に一生懸命患者さんから聴取して、環境設定を行なっても、実際の場面では違うことが行われていたりするものです。
具体例②
つづいて2例目です。
屋内の生活には困っていない状態の患者様です。
体力の低下で、近くのコンビニに行けないので、生活に困っているという訴えでした。
この方の場合は、屋外へ積極的に行き、道中の問題点を炙り出していきました。
・少し傾斜があるところだと歩きづらいことがわかった。
・歩く場所を選んだ。
・傾斜地を歩けるように、バランスの練習などを行なった。
少し傾斜がある場所だと、歩きづらいということがわかり、そこを改善できるように歩く場所の工夫をしたり、身体機能を上げることによって改善しました。
その結果、コンビニまで買い物に行くことができるようになり、目標が達成されました。
これらのように、目標が明確で達成できたかどうか判定がしやすいと、訪問リハビリも終了しやすくなります。
意外と、生活で困っていない人よりも終了しやすいかもしれません。
3.家族が困っている場合
家族が困っている場合のニーズは、患者様の身体機能の改善があまり大きく期待できないことが多いです。
・介助方法がわからない
・介護方法はわかるけど、動作が大変すぎる
・サービスを使用できるということがそもそもわからない
家族は介護生活を余儀無くされるわけですが、上記の項目のように生活に困るという状態が多い印象です。
そのため、患者様の動作レベルを向上させることによって、家族の介護負担を減らすということが目標になることが多いです。
・改善できる身体機能はないか、しっかり評価する
・適切なサービスを導入するように家族に促す
・ケアマネさんと連携し、状態を適切に報告する
・家族に介護指導をして動作負担を軽くする
このようにケアマネさんと連携することが重要になってきます。
ここで、訪問看護ステーションの強みが出てくるかと思います。
看護師さんからの目線も加えることによって、リハ職では気づかないことも気付いてもらえるかもしれません。
リハ職の視点は実はかなり狭いです。
プライドがある人もいるかもしれませんが、チームで適切に業務を行うには邪魔になることもあります。
患者様ファーストで最善の選択ができるようにして生きたいですね。
それでは具体例です。
具体例①
1例目は、90代の夫婦の家庭。
・日中は老夫婦2人だけの家庭
・夫はほぼ寝たきり
・介助にてようやくベッドに腰かけられる程度の身体機能
通院の時の車椅子への以上動作の介助量が多く、困っています。
また、日々のおむつ交換が大変というニーズでした。
これに対しては、夫の身体機能を上げることは栄養状態の面などからして難しい状態でした。
そのため、動作の指導や、導入している介護ベッドの使い方などをフル活用して、なんとか車椅子に乗れるような環境設定、動作方法にしました。
また、ヘルパーさんの導入も行い、奥さんがおむつ交換をする回数を減らして介護負担の軽減をしました。
4.状態を維持することが求められる場合
状態を維持することが求められる場合は、進行性の疾患などで、今後の予後予測として、生活が困っていくことになると予測される場合が多いです。
また、難病でなくても、脳卒中の方で麻痺が比較的重度の方も該当すると思われます。
介護度も高くなっていることが多く、サービスなどはしっかりと組まれている例が多いと思います。
そのため、サービスの内容を再構築するというよりも、状態に変化がないのか、今のサービスのままで大丈夫かなどの評価を行なっていきます。
具体例①
私が経験した例です。
20代の女性で、神経系難病の方です。
屋内の生活は自立していますが、症状が進行してくるに従って、トイレの動作やお風呂での動作が困難となってきている状態です。
これらの生活を維持・改善するために訪問看護が利用されています。
基本的には大きな変化は見られない状態なので、現在の身体機能で楽に動作ができるように、環境設定を行なっていきました。半年〜1年くらいのペースで身体機能低下に伴って何かしらの設定を変更していくというスピード感です。
具体例②
2例目です。脳卒中の患者様。麻痺がそれなりにあり、屋内での生活が中心となっています。
歳を重ねていくことで、身体機能が落ちていくことが怖いというニーズでした。
この方は、自主練習も行なっていましたが、やり方が間違っていたり、負荷量が少なかったりしていたので、自主練習の再設定と、確認の作業に時間を使った症例です。結論、自主練習の最適化ができ、身体機能の維持が今でもできている状態です。
まとめ
訪問看護ステーションにおける、理学療法士の役割について述べてきました。
結論としては、それぞれのニーズに合わせて活動をしていくだけですが、最初はこのニーズを掴むのに苦労しました。結局どこに向かって行ったら良いのかわからなかったです。
利用者さんと適切にコミュニケーションが取れるようになってくると、ニーズの把握もできるようになってきます。また、家族からニーズを聴取するスキルも徐々についてきますので、何に向かってリハを展開していくのか、明確にしていきたいですね。この、どこに向かってとか、なんのためのリハなのかが明確になるとリハビリの内容もより具板的に無駄のないプログラムになると思いますので、参考にしてください。